始まりはドイツからの風

 2011年3月11日の東北地方を中心とする大災害のニュースを受けて、ドイツの『教育芸術友の会』がメンバーを募り、「災害にあった子どもたちのトラウマをケアする」という目的を持って同年4月末に来日しました。教育者や医者、アーティストを含む8人の構成でした。『教育芸術友の会』は、世界各地の災害などでもメンバーを派遣している実績があるボランティアグループです。この時、仙台を基点として保育園児とその家族、小学校、学童のクラス、障害のある子どもたちのホームなどを訪問。彼らの日本の滞在は2週間にわたりました。強いショックで心もからだも硬くこわばらせた子どもたち(ときには大人たち)を解きほぐすためドイツチームは精力的に動きました。このとき、ドイツチームの活動を支えるために、日本でもボランティアスタッフが集められ10数人が行動を共にしていました。

 

「教育・芸術・医療でつなぐ会」発足へ

 ドイツチームの活動を傍らでサポートしながら、子どもたちの瞳にかがやきが灯る瞬間を目にして「こんなケアが必要なんだ」ということが日本のメンバーにも実感されました。さらに「こういった支援を続けていきたい」という思いが日本人グループの中に芽生えてきました。がれきは片付けられつつありましたが、復興への道のりが長いものになることは明白でした。からだにも心にも、よりいっそうのケアが必要とされる。それなら自分たちのできることで支援を続けよう。ドイツのグループが去ったあと、有志が集まりを持ちました。

  こうしてスタートしたボランティアグループが「教育・芸術・医療でつなぐ会」です。

 

メンバーはシュタイナーの人智学を絆に

 ドイツ『教育芸術友の会』はシュタイナーの精神科学アントロポゾフィー(人智学)を基盤としていますが、日本のメンバーも、シュタイナー学校(幼児)教師、治療教育家、オイリュトミー療法士、芸術療法士、看護師、医師など、シュタイナーの教育学や人智学を学んだことで結びつきを持っています。メンバーはそれぞれの現場でプロフェッショナルとして仕事をしています。20213月現在およそ30数名が登録しています。一部メンバーの紹介はこちら

 

ルドルフ・シュタイナー(1861-1925)とシュタイナー学校

 オーストリア生まれの思想家。スイス(バーゼル)にアントロポゾフィー(人智学)の拠点としてゲーテアヌムを建設。科学、芸術、医療、教育、農業の分野で、今日に至るまで全世界に多くの影響を与えている。著作・講演録など354冊が出版されており、日本でも筑摩書房、イザラ書房などから邦訳も多い。初のシュタイナー学校は1919年にドイツ(シュトゥットガルト)に「自由ヴァルドルフ学校」として開校されたが、今日では世界70カ国におよそ1000校がある。参考”What is a Steiner school?英語版 http://vimeo.com/1535001